江戸川区における木造住宅の耐震補強は、なぜ必要なのか。
木造住宅をはじめとする建築物の耐震基準は、建築基準法に基づいて定められていますが、1981年以前に建築された木造住宅は、現在ほど耐震性の基準が高くありません。
今回のブログでは、江戸川区の木造住宅を対象とした耐震補強に関する助成金制度や具体的な耐震補強の方法、事例についてもご紹介します。
また、専門家の視点から、江戸川区の木造住宅の耐震補強における重要なポイントや費用内訳、業者選びのコツもお伝えします。
地震の際、木造住宅の倒壊する原因は?
江戸川区は、東京23区の中でも地盤が柔らかく、地震対策の必要性が高い地域。1981年以前に建てられた旧耐震基準の建物が多く残る江戸川区では、耐震性の向上が求められています。
耐震補強の必要性の高い建物
・「旧耐震基準」といわれる1981(昭和56)年6月以前に確認申請を受けた建物
・建築基準法を守っていない違反建築物や違法な増改築を繰り返した建物
・床下に白アリ被害がある建物
・ピロティ式の建物
・1階部分が店舗などでガラスの面が大きくとってある建物
自宅などが地震に強いや弱いかは、専門家による耐震診断を受けることで判断できます。耐震診断で住宅の弱点と対策を知ることがまず第一です。家の倒壊や崩壊の70%は柱の「ほぞ抜け」が原因ともいわれるので、建物の土台となる基礎部分が地震に耐えれる建物なのかをしっかり調べてもらいましょう。
過去の大きな地震からの教訓
阪神淡路大震災を受けて
1995年1月に起きた阪神淡路大地震では、犠牲者の約8割が、家屋の倒壊によるもので、約5000人の人々が、木造住宅の倒壊により、家屋の下敷きに…。 その倒壊原因の70%以上が「柱のほぞ抜け」といわれています。
そこで政府はほぞ抜けを防ぐための政府の施策として、震災後に建築基準法を改正。柱と基礎の接合部分に、ほぞ抜け防止金具としてホールダウン金物という器具を設置することが法律で義務付けられました。
課題は、ホールダウン金物は新築の施工中の家にしか取付できないということです。
熊本地震を受けて
2016年4月、2度の震度7に見舞われた熊本地震では、多くの木造戸建て住宅に大きな被害が発生しました。
倒壊した建物の多くは、筋交を釘だけで固定していたり、柱と土台を金属板と釘だけで簡単につないでいたりした建物でした。
新耐震基準をさらに厳しく改訂した「2000年基準」
建物全体の耐震性を向上させることを目的に「地盤に応じた基礎設計」「基礎と柱の接合部に金具の取り付け」「耐力壁のバランスと配置」が強化されました。
接合部の強度がいかに大事かが明らかになり、国土交通省は「2000年基準」が有効なものとして、2000年以前の木造家屋について、リフォームの際にも接合部を確認するよう勧めるようになりました。
耐震補強工事の種類
耐震補強工事の種類
◆外壁や内壁に筋交いや構造用合板を追加し耐力壁を増設
耐力壁は、地震や風などによる横からの圧力に対抗する壁のこと。補強材を斜めに渡す筋交いや構造用合板を張ることで強度を高めます。耐力壁が多いほど、耐震性が上がります。
外壁
屋外側から筋交いや構造用合板で補強(外壁仕上げ工事を含む)する方法です。
外壁を壊す必要があるので費用が高くなる可能性もあります。
内壁
押入れや室内側から筋交いや構造用合板で補強(内装仕上げ工事を含む)する方法です。内壁を壊す必要があるので費用が高くなり可能性もあります。
◆屋根の軽量化
建物は重量があるほど、地震の揺れ幅や衝撃が大きくなり耐震性に大きな影響を与えるため、瓦などの重い屋根から軽い金属葺に替えることで、建物にかかる水平力を軽減します。ガルバリウム鋼板や軽いスレートの屋根材、外壁にモルタル以外のサイディングを採用して建物全体の軽量化を図ると耐震性が高い建物になります。
屋根が傷んでいたり雨漏りがする場合に軽量化を含めた補修を行うことが多いです。
◆基礎の改修
耐震性を高めるには、基礎や床の強度も重要です。いくら上の構造の耐震性を高めても基礎や床の強度が足りないと、地震で変形するおそれがあります。
鉄筋コンクリートの基礎を増し打ち補強したり、ひび割れを補修したりします。
補強
既存基礎の内側又は外側に鉄筋コンクリートの基礎を増し打ちします。
新たに基礎を増設する場合は、増し打ち補強に比べて単価が上がります。
補修
ひび割れ部分にエポキシ樹脂を注入し補修します。鉄筋による補強に比べ安価で耐震化できます。
◆接合金物の設置
壁の補強に併せて金物を設置することで強度の高い耐震補強ができます。
筋交い金物
筋交いの上下両端を接合金物で固定。筋交いの取り付く形状や強度に合わせてボックスタイプやプレートタイプがあります。壁を壊す必要があるので、費用が高額になります。
火打ち金物
2階床組みや小屋組みの隅部を斜めに連結して変形を抑えます。費用が高額です。と
ホールダウン金物
土台や梁から柱が抜けないようにホールダウン金物で固定します。壁を壊す場合もあるので高額な費用が必要です。
そのほかにも地盤改良、壁の配置バランスの調整なども有効です。
江戸川区においても旧耐震住宅を対象にした制度があり、東商住建では、耐震性の必要性の有無を判断する建築士「耐震コンサルタント」が在籍しております。耐震コンサルタントとは、耐震性があるかどうかの診断や、耐震化のためのアドバイスができる建築士です。
また、既存の木造住宅の調査・診断・改修設計・施工・維持管理などに関するスペシャリスト、「住宅医」による診断も実施。劣化診断や耐震診断だけでなく、温熱省エネ維持管理、バリアフリー、火災時の安全性等、既存住宅の性能を総合的に診断する性能向上診断などが利用できます。
耐震リフォームの事例紹介
ではここで、東商住建においての耐震補強工事をご紹介します。
「S様邸の南東は日の光が入って明るく暖かいのですが、耐震強度が弱くて不安な日々を過ごしていました。」
S様が相談された業者によっては、「家の外側に太い筋交いを入れる」という提案をしたり、「住みながらのリフォームはできない」という業者もあったようです。お客さまは、どの方法が一番いい方法なのかは判断できませんから、状況と予算に合わせたご提案をいくつか行い、選択肢のある中で、ご納得していただいた工事を進めることが大切なのです。
東商住建からの提案
・純和風の木造2階建て住宅の趣を壊さないことをコンセプトに、できるだけ見えないところに手を加える耐震補強をご提案
・耐震補強工事は施工前に綿密に調査を行い、データに基づいて施工
S様邸においては、基礎や壁に耐震補強の金具を入れ、今の住まいの雰囲気はそのままで地震に強い壁を施工していきました。リフォームの進め方についても、ご家族が普段通り安心して暮らせるよう「一部屋ずつ工事を進めていくので、普段通りに暮らしてください」とお伝えしました。
記事のすべてを読む▶︎「住みながら耐震補強工事ができてほっとしました。これでぐっすりと眠れます。
S様邸の施工事例はこちら▶︎住みながらの性能向上リフォーム|東京都江戸川区一之江
施工方法も進化するケースが多いので、最新の情報の提供や、適材適所の対策方法なども踏まえた上で、ご提案することにつとめています。
リフォームと耐震補強を同時に行うメリット
リフォームを機に、耐震診断と補強を同時に行うことは工事の計画を一度にまとめることができ、施工期間の短縮や日常生活への影響を最小限に抑えることができます。また、施工業者との打ち合わせや契約が一度で済むため、手間と時間を節約できます。さらに、費用面でも、同時施工による工事の効率化や資材の効果的な利用により、別々に行うよりもコストを抑えることが可能です。
例えば、断熱性能の向上や間取りの変更を含めたリフォームに耐震工事をプラスすることで、住まいの快適性と価値を大きく向上させることができます。これにより、家全体のバランスが取れた改修が可能となり、長期的な安心感と満足度が得られます。
さらに、自治体や国の助成制度は、耐震だけではありません。
天井や床下、窓などの断熱リフォームや外壁や屋根の断熱リフォームほか、支援してもらえる助成金が多くあります。このように、リフォームと耐震補強を同時に進めることは、住まいの安全性と快適性を一挙に高める賢い選択です。
耐震補強後のメンテナンスの重要性者
地震の発生後こそ迅速な点検を
耐震補強後のメンテナンスは、建物の安全性を長期間にわたって確保するために欠かせません。まず、リフォームの一環として基礎の耐震診断を行い、補強箇所に異常がないかを定期的に確認するようにしましょう。
木材や金属部分の腐食や錆びを防ぐため、防水対策や塗装のメンテナンスを適切に実施し、制震装置が設置されている場合はその機能が正常に働いているかどうかを確認しましょう。専門家による定期的な診断を受けることで、耐震補強の効果を持続することができます。
耐震補強の最新技術と今後の展望
近年、リフォーム分野における耐震補強技術は急速に進化しています。特に注目されるのは「制震ダンパー」や「免震装置」の進化で、これらはほとんどの建物の基礎に組み込むことが可能です。
制震ダンパーは地震の揺れを吸収し、建物への負担を軽減する装置で、木造住宅においてその効果が高く評価されています。また、免震装置は建物自体を揺れから切り離し、地震の影響を最小限に抑えます。
今後の展望としては、AI技術を活用した地震予測と連携した耐震補強システムの開発が期待されています。これにより、地震が発生する前に最適な耐震対策を講じることが可能となり、さらなる安全性の向上が見込まれます。技術革新により、コスト削減とともに、より効果的な耐震対策の普及が期待されています。